夢との交信:グラハム・ベル
「ブレイクへ送った検体 ( 死人の耳) にG( ソ) の音で歌った音の記録の手紙」の再生実験

Contact of Dream: Experimental image reproduction of a Letter to Blake from Bell. Sung to G
(as his initial Graham) using a dead body's ear(Specimen) by Graham Bell

2020

1874 年の図版をアメリカ議会図書館Manuscript Division [unless another division is specified], Alexander Graham Bell Family Papers at the Library of Congressデジタルデータ(パブリックドメイン)よりトレースし復元
Scratching a smoke glass tracing a digital data (from 1874) of Library of Congress, Manuscript Division [unless another division is specified], Alexander Graham Bell Family Papers at the Library of Congress (Public Domain)
ベルとブレイクが作ったイヤーフォノトグラフは、死体の耳の鼓膜に藁の針をつけた再生機能のない録音機である。煤をつけたガラス板に針をのせ、ガラス板を動かしながら耳に声を吹き込むことで音の波形を記録することができる。ベルがその試験結果をブレイクに送った手紙のデジタルデータを印刷。煤をつけたガラス板の裏に敷き、光をあて、微かに見える記録をなぞってドローイングしたものである。 一般的に音のチューニングや試験は A(ラ)の音が選ばれることが多い中、ベルは G(ソ)の音を彼のイニシャルである G(raham) から選択したとの記述がある。科学技術のために、名もなき検体となってしまった一人の人間の耳に話しかけるように、自分の名前をつけて囁いたのではないだろうか?そんなことをガラスに映り込んだ自分にハッとしながら私もG(aetan) であることに気がついた。
トーマス・エジソン《エジソンティン フォイル1号機( 蘇言機)》復元
Thomas Edison "Edison tin foil phonograph called Sogon-ki (Voice revive machine) in Japan"(Replica)
Unknown (Original: 1877)
スチール
Steel
日本初の蓄音機が言葉を蘇らせる「蘇言機」と翻訳されたことに、一度声を録音すれば、その死者は永遠に蘇る(つまり再生できる)機械としてのニュアンスがあったのかと思わせられる。
夢との交信:記録者不明「1887年円盤式地震 記録に記録された東京の揺れ」の再生実験
Contact of Dream: Experimental image reproducing of disk record of shake happened in Tokyo
on 1887 by unknown person

2020
1887年の青焼地震記録を東京大学地震研究所所蔵データより、ガラスにつけた煤を削りながらトレースし復元
Scratching smoked glass from a blueprint (recorded in 1887) of Earthquake Research Institute, The University of Tokyo.
円盤式地震記録は煤のついたガラス板に針をつけ、回転中に針が揺れることによって煤が削られ、記録される。記録は青焼き写真に転写されると、再び煤をつけフォーマットされる。 この記録は東京大学地震研究所に保管されている 1887 年 1 月 15 日に起きた地震記録の青焼きを撮影し、そのデータを実寸で印刷した物を、煤のついたガラス板の裏に敷き、光をあて、微かに見える記録をなぞってドローイングしたものである。アナログシステムである初期の地震記録は、煤の濃度や針の感度といった記録者の個人が強く反映される。記録を手でなぞることは転写をするより写実性が失われるが、記録とはそもそも主観的な物である。私は生まれる 100 年前の地球の揺れを手でなぞるにつれ、記録者に思いを馳せたが、青焼きには記録者の名前が記載されていなかった。
ジェイムス・アルフレッド・ユーイング 《ユーイング型 円盤式地震計( 復元模型)》
Sir James Alfred Ewing "Ewing type Disk-recording Seismograph" (Replica)
Original was made in c1879

金属、藁、ガラス、煤、ニス
Metal, straw, glass, soot, vernish

日本に蘇言機を紹介したユーイングはその装置が影響し後に地震計を開発する。円筒型から円盤型に移行した録音機器と対照的に、地震計は円盤型のものから円筒型に移行したのが印象的で、音と地震がいかに密接で相互関係があるかを物語っている。この地震計は東西と南北の2 軸であるが、後に高さを付け加えられた物が、左にある円盤式記録となる。
関谷清景《地震動軌跡模型》
SEKIYA Seikei (Kiyokage) "Model showing the motion of an earth-particle during an earthquake"
1887
銅線
Copper wire

日本の地震学の開拓者の一人である関谷清景が、上記の地震動記録(オリジナル)より東西、南北、高低を数値化。1秒ごとの地面の動きを 50 倍に拡大したものを針金によって三次元化したものである。左は地震動の始まりから 21 秒まで、中央がそれから 41 秒まで、そして右はさらに 72 秒までの地面の動きを示している。
音震遠感覚之図
Telesensation map of Sound and Vibrations
1887
コラージュ
Collage
制作過程で集まった資料を、即興的に壁面にコラージュしていき、それらを線で結んでいく。本展出品作品は全てコロナ禍から始めた制作であるため、図書館や取材などフィジカルな情報アクセスが一切できない状態からスタート。オンライン上に限られたデジタルデータの収集は現実より膨大に肥大しデータの渦に溺れていく。現実へと抜け出すためにこれらを出力する必要があった。自分の口を身体を中心に臓器のように記号を結び付けながら描いていく行為は不条理でありながらもどこか意味がある様な感覚へと導く。